入れ歯
入れ歯が合わない、
入れ歯を作りたい
高齢になっても痛い歯がない!抜けている歯がないことが健康維持のための基本です。 歯がある人とない人では当然ですが体力には大きな差が出てきます。まずしっかり噛めて「食べる!」を維持することが要介護予防のスタートです。
歯の健康と寿命
虫歯や歯周病で歯を失った後、そのまま放置しておくと
① 周囲の歯が傾き始めます
歯はお互いに隣同士接して支え合っているのですが、隣の歯がなくなった場合後方の歯が倒れてきたり、噛み合わせる歯がなくなることで残された其々上下の歯が伸びてきます。これは個人差はあるものの半年から1年で動いてきます。
② 残っている歯に負担がかかり健康な歯まで早くダメになります
③ しっかり噛めないことから必要な栄養がとりにくい
④ 空気が漏れたりして話がしにくい、発音も不明瞭になる
⑤ 頬がこけた感じになるなど顔の表情も変化します
柔らかい物を食べる様になり、顎の筋肉も衰えがちになります
⑥ 人とのコミュニケーションの機会も消極的になりがち
歯がなくなることから負のサイクルが始まります。
しかし、たとえなくなった歯があったとしても義歯等で補うことは可能です。
歯と脳の関わり
神奈川歯科大学の山本龍生教授らの興味深い調査結果があります。65歳以上の日本人4425人を追跡調査した研究です。
この研究から、要介護の原因となりうる認知症、転倒骨折について以下のことが分かりました
- 義歯の未使用者では認知症発症のリスクが歯が20本以上ある人と比較して1.85倍
- 義歯の使用によって認知症発症のリスクが約4割減にできます
【認知症】
- 残っている歯が19歯以下で義歯の未使用者の転倒リスクは20歯以上残っている人の2.5倍
- 義歯の使用によって転倒リスクが半減する
【転倒・骨折】
実際、在宅の現場でも、口から食べていなかった寝たきりの高齢者が入れ歯(義歯)を作って口腔リハビリを行い、口から食べられる様になって回復していくという例も報告されています。
噛むことで歯の周囲の繊維(歯根膜)から神経に刺激が伝わり大脳の感覚野、運動野、記憶を司る海馬などが、活性化されるとわかっています。
ここまでで歯がなくなった時に何らかの形で代用できるものを入れる必要性はおわかりになったと思います。
歯を失った後の3つの回復手段
①入れ歯 取り外し式のものです
- 固定式のブリッジの様に隣りの歯を大きく削ったりしない
- 清掃や破損した場合の修理も口の外で行うのでやりやすい
- 特に大きな手術は不要である
- 製作期間は短い
- 広範囲の欠損もカバーできる
メリット
- 健康な自分の歯より咀嚼(噛み砕く)力は低い
- 取り外し式の為破損や歯に固定するバネの部分が経年的に 緩くなることがある
- 固定式の歯に比べ慣れるまでに時間がかかることがある
- 残存歯の配置によってバネをかけた歯に負担がかかる場合がある
- 形によっては前から見て歯にかけたバネが見える(今は透明や歯肉色のバネもあります)
デメリット
②ブリッジ 固定式のものです
- セメントで歯に固定する為着脱の煩わしさはない
- 違和感は少ない
- 治療期間は短い
メリット
- 両隣に歯がある場合に適応となる
- 支える歯は虫歯の無い歯であっても大きく削らないとならない
デメリット
③インプラント 歯のない部分の骨に金属を埋め込み、その上に歯を作る
- 両隣の歯を削る必要はない
- 骨内に固定するので外れることはない
- ケアは自分の歯と同じにできる
メリット
- 通常の歯でいえば「根」に当たる金属を顎骨に埋め込む手術が必要
- 骨が無い部分には埋め込むことができない為抜歯後開始までに長期間必要であったり、骨造成などの前準備が必要
- 本数が多い場合は費用が高額になる
デメリット
入れ歯(義歯)の種類
入れ歯はその材料によって特徴があります。また残っている歯がある場合 (部分入れ歯)と残っている歯が無い場合(総入れ歯)に分けられます。
●材料による分類
①レジン床(プラスチック・保険義歯)
保険の総義歯
保険の部分義歯
メリット
- 保険の扱いなので安価である
- プラスチックなので修理は簡単にできる
デメリット
- 材質的には弱い為強さを維持する為に厚みが厚くなってしまう
- 食べ物や飲みものの温度を感じにくい
- 割れることがある
②金属床(貴金属、チタン、コバルトクロム等の金属を使用)
チタンの総義歯
コバルトクロム局部義歯
メリット
- 金属なので薄く軽くできる
- 温度を感じられる
- とりわけチタンは人工関節手術にも用いられる生体親和性のいい金属です
- 強度があります
デメリット
- 高価である
- 修理に時間がかかる
- コバルトクロム合金の場合多少味が変わることがある
- チタン以外は重い
総義歯(総入れ歯)
チタン床 | 385,000円(税込み) |
---|---|
コバルトクロム床 | 308,000円(税込み) |
レジン床 | 保険適用です |
部分義歯(部分入れ歯)
チタン床 | 385,000円(税込み) |
---|---|
コバルトクロム床 | 330,000円(税込み) |
審美義歯 | 110,000円~180,000円(税込み) |
③審美義歯(歯に留めるバネの部分がピンク色や透明色の為入れ歯だと気づかれにくい義歯)
メリット
- バネ部分が目立たないので審美義歯と言われる
デメリット
- 新しい材料がすぐ開発されるので修理の時材料が生産中止でできないことがある
- 素材そのものに弾力性があるので、欠損歯数が多い場合たわんでしまい噛みにくい
- 金属使用の義歯に比べて耐久性は低いので定期的に作り替えの必要がある
④BPSデンチャー(生体機能的補綴システム)
ヨーロッパで開発され日本人向けに改良された入れ歯のフルオーダー製作システムです。精密印象(型採り)の後ゴシックアーチという装置を用いて高さや水平位を決定する方法で、これは術者の勘や経験で採った位置ではなく、その患者さんの生体の本来の位置を再現できます。そして噛めるという機能だけでなく、形態もごく自然に見える義歯になります。
入れ歯ができるまで
-
歯が残っている方は虫歯・歯周病の有無の確認
入れ歯は最後の治療工程になります。バネ(クラスプ)をかける歯の虫歯や歯周病の治療を終わらせます。
-
各個トレー作成の為の概形印象(型採り)
既製のトレーではその患者さんに合わない部分もあるのでまず概形の型からその患者さんの個人トレーを作製します。
精密印象(型採り)
作製する義歯、難易度によって材料がかわることもあります。
咬合採得(噛み合わせの高さ、前後の位置を決める)
ここでも義歯の種類等により材料を変えます。
また多くは人工歯の形、色をここで見ておきます。配列・試適
咬合採得で決めた位置に歯を並べてみます。高さ、位置等あっていれば次回は完成になります。
完成
完成した入れ歯を使ってみましょう。
調整
使ってみると痛い場所が出てきますので調整をしていきます。
ここでは一般的な流れを紹介します。
慣れないうちは異物感がありますが数日我慢してみましょう。
また歯科医院に調整に行く時はどんなに痛くても1食か2食は食べてから行きましょう。
入れ歯のお手入れ
入れ歯は健康な食生活や他の人との会話を楽しむために欠かせない人工臓器です。自分の歯の代わりになるものですのでお手入れも大切です。
- 夜寝る前に取り外して外側は柔らかい歯ブラシで綺麗にしましょう。内面は擦り過ぎるとお口の状態と合わなくなるので注意します。
- 熱いお湯で洗うのは避けてください。
- できれば1日1回は入れ歯洗浄材につけて綺麗に保ちましょう。
- 睡眠中は外しても構いませんが、入れ歯には残っている歯や顎関節を保護する役目もあります。外したい方は歯科医師に相談してもいいと思います。
- 口の中の状況は変化していきます。また入れ歯そのものも変形したり人工歯もすり減っていきます。自分の歯のメンテナンスと同じ様に6か月に1度は調整に行かれるのがいいと思います。