親知らず
親知らずが腫れた経験がある方も多いと思います。親知らずは大体20代後半までには生えてくる第3大臼歯をさし、位置は口の中ではちょうど真ん中から数えて8番目にあたり、永久歯の一番後方(のどの近く)に生えてきます。
もうこの年齢になると親が見ることも少ないので「親知らず」や智歯と呼ばれます。
親知らずの功罪
「親知らずは抜いた方がいいですか?」 一概にはいえませんが下記にまとめました。
残す方がいい場合として
- ブラッシングがきちんとできて、上顎の場合は下顎、下顎の場合は上顎にかみ合わせに参加できる健康な親知らずがあれば残す価値はあります。ただし、上下顎共に一番奥にあり磨きにくい為定期的なクリニングでチェックするのがいいと思います。
- 親知らずより前の歯を抜歯してしまった場合ブリッジという方法でなくなった部分の歯を作る際の土台として使えます。
- また将来何らかの原因で自分の歯を抜歯することになった時に移植できる可能性もあるかもしれません。
逆に抜歯した方がいい場合として
現代の食生活は昔の様に硬さや噛み応えのあるものばかりではなく、全体的に軟食になってきていることで噛む回数も格段に減り、顎の骨も成長の悪い方が多いです。そして皮肉にも栄養がいい為に歯が大きくなり、最後に生えてくる親知らずまで並び切れません。
- その為に前の歯に喰い込んで生えたりして大切な前方の歯が虫歯になることもあります。これは下顎のみでなく上顎にもおきます。
- 完全に出られないまま歯茎に半分埋もれていることで炎症が起きたりします。炎症がおきて口が開きにくくなったり、頬が腫れて辛い思いをした人もいると思います。
- せっかく矯正で歯並びを治して綺麗になったのに最後に生える親知らずが横向きに生えて歯列を乱す可能性があります。こういう場合は親知らずは早めに抜くことをお勧めします。
親知らずの抜歯は歯茎が腫れていたり、口が開けられない時期はできません。なので体調のいい時に早めに抜歯しておきましょう。いずれにしてもかかりつけの歯科医院でよく相談されるといいと思います。
親知らずの抜歯
正常方向に真っ直ぐ生えている場合は比較的楽だとは思いますが、大変なのは下顎で骨の中に埋まっている場合の抜歯は大変といわれます。下顎の親しらずの下には神経と血管が通っている管がありそれに近いほど注意が必要です。
顎の骨に埋まっている親知らずの抜歯の大変さは埋まっている深さが深いほど、それと親知らずの歯の傾きが大きいほど(横向きなほど)困難だと言われています。それは抜く時に歯を幾つかに割って取ったり、周囲の骨を取らないと抜けないからです。骨を取ったりすればどうしても出血や痛みも出ますし、翌日位から頬が腫れる場合が多いです。
その為、抜歯後は抗生物質や腫れ止め、痛み止めの薬が出されます。ただこの腫れも通常であれば1週間くらいで引くことが多いです。あとは時間の経過と共に抜いた所の穴に歯茎が少しづつ上がってきて、最終的には平らになるのです。
という訳で特に下顎の親知らずの抜歯は抜く必要があるのでしたら余裕をもってされることをお勧めします。
何回も親知らずが腫れた経験のある方は、いつまた腫れるかわからない爆弾を抱えているようなものですので、早めに抜く方がいいかもしれません。その時は大変ですが1度抜いたらもう生えてくるものではありませんので…。
親知らずの抜歯の方法
抜歯の準備としてレントゲンを撮ることは多いのですが、特に下顎の親知らずの抜歯については事前に下を通っている下顎管(中に神経と血管が通っています)との位置関係をみることが大事です。
下顎管に近い、または親知らずの根が曲がっている、根が大きく膨らんでいるなど注意が必要な場合はレントゲンの他にCTを撮影することもあります。確認が出来たら抜歯です。普通に上向きに生えている親知らずでは通常の抜歯ですが、下顎の骨内に埋まっている歯の場合歯肉に局所麻酔(部分麻酔)をして、痛みが無い様にします。時間がかかりそうな抜歯が予想される時は、抜歯する親知らずの側の下顎骨の感覚を無くすような麻酔を追加することもあります。麻酔が効いたら歯茎に切開線をいれ、骨面を出して親知らずの周りを被っている骨を最小限取り除きます。 親知らずが前の歯に喰い込んでいる様な場合は、歯を削る機械で喰い込んでいる部分を削ります。
その他、抜く為の器具を入れるスペースを作る為に、幾つかに歯を分割して取ったりして最後に残った歯根をゆっくりと動かしながら脱臼させて取り出します。中をきれいに洗浄して最後に開いた歯肉を専用の糸で縫い合わせて終わりです。
止血を確認してその日は終了です。あとは指示通りに処方された抗生物質や痛み止めを飲んでください。
以上基本的な手順を書いてみました。これを読んでくださった方は親知らずの抜歯はそんなに簡単ではないということ、小規模な手術であると言われる所以がおわかりただけましたか?もし抜かなければならない親知らずがある方は、体調のいい時に抜いておきましょう。
親知らずの抜歯前や抜歯後の注意
まず抜歯前の注意です。これは親知らずに限ったことではありませんが、特に下顎の親知らずについては翌日あたりから顔が腫れてくることもあるので、抜歯後にすぐ大切な行事などの予定が入っていなく、時間的にも余裕のある日がいいでしょう。また、抜いた後ゆっくりできるからと年末や連休前に予約を入れる方もいますが、逆にそういう期間は歯科医院もお休みになりますので、できれば避けた方がいいかもしれません。抜歯前は睡眠不足にならない様に、また当日は空腹よりは多少簡単な食事を済ませて行く方がいいでしょう。
次に抜歯後の注意です。抜歯後は出血が止まってから帰ってもらいますが、それでも切開したりしていることもあり多少唾液と一緒になりいつまでも出血している様に見えることがあります。こんな時は家にある清潔なガーゼ、無ければティッシュペーパーやコットンを大きく丸めて抜いた歯の下に置き、グッと噛んで待ちましょう。
暫く噛んでいると血は止まるはずですが、それでもまだ出血している様なら歯科医院に連絡してください。またせっかく血餅といって血の固まりが傷口を塞いで止血したのに、過度なうがいをすることで血餅が流れてしまいますのでうがいは最小限にしておきましょう。
その他親知らずの抜歯の際に抜く側半分麻痺させる麻酔をすることがよくあります。そんな時は3時間から5,6時間麻酔が効いていることもありますので食事の時は口の中を噛んだりしない様注意しましょう。
最後に歯科医院で処方された抗生物質はアレルギー症状が出たなど以外は必ず飲み切りましょう。その他不安なことが起きたら歯科医院に連絡してみてください。