歯周病
歯茎が腫れる、歯が動いている(歯周病治療)
歯周病ってどんな病気?
歯と歯肉の間にあるポケット(隙間)に①歯周病菌が住みつき②喫煙やストレスなどの生活習慣の要因に加え、更に③全身的な体の免疫低下など全身的な要因が重なり発症したり悪化する病気です。
歯垢(プラーク)も時間の経過と共に歯石となり、両方の中にいる歯周病菌が歯茎にダメージを与え、歯を支える骨を破壊していきます。
但し痛みなどの自覚症状はなく、気づいた時にはかなり進行していることもあります。
歯周病は「お口だけの病気」と思っていませんか?
歯周病菌に感染するのは歯茎だけではありません。
唾液(ツバ)や血管を通して体内に侵入し、図のようないろいろな病気をもたらします。特に糖尿病については歯周病菌由来の毒素などがインスリンの働きを阻害し血糖値上昇させ糖尿病を悪化させるとされています。
また、加齢によって、嚥下反射やせき反射が低下し、唾液や食物と共に、歯周病原因菌が気管に入れば誤嚥性肺炎を起こすことは知られています。
- 歯周病の治療やブラッシング、舌苔の除去によって口腔内の細菌数を減少させる
- 唾液腺のマッサージ等を行い、唾液分泌を促し口の中を清潔に保つ
ケア
堆積したプラークは時間の経過と共に歯石となり、自分で除去することはできなくなるので歯科医院で除去します。
- 歯石除去ほか歯周初期治療
- 機械を使ってのクリニング
- 抗生剤等の薬物投与
【歯科医院でのケア】
- ブラッシング(歯ブラシ、歯間ブラシ、ワンタフトブラシ)やフロスでのケア
- 薬物成分歯磨剤、リンス等の使用
- プロバイオティクスとして乳酸菌が生産する酸で歯周病原細菌を殺菌する方法
【自身でのケア】
上記の2つのケアはどちらか一方が欠けても健康な状況は保つことはできません。
ご自身でのケアと歯科医での専門的ケアの両方が必要です。
メンテナンスについて
このように歯周病は日和見感染(ひよりみかんせん・免疫力が低下した時にかかる病気)であり、コントロールは可能ですが、細菌をゼロにすることはできない為、歯周病には完治ということはありません。
歯周ポケット内に残った数少ない菌は3~4ヶ月でまた元に戻っていくからです。
そのため歯科病院で歯茎の中のプラークが成熟しない様に細菌性の沈着物を除去するという生涯のメンテナンスが重要になってくるのです。
歯周内科治療も実施しています
歯周内科治療はどんな治療ですか?
歯科でいう2大疾患は虫歯、歯周病といわれどちらも細菌感染症と言われています。細菌感染症であるなら理論上は口の中から細菌を完全に除去すれば治癒すると考えがちですが、実は歯周病細菌も口腔内に常在細菌としていつも存在している菌の1種なのです。冒頭にも書きましたがその人の身体の抵抗力と常在細菌の一部のバランスが崩れた時に発症したり悪化するのです。裏を返せば健康な歯肉の状態の人は常在菌集団と身体(歯肉)のバランスのとれている人ということです。口の中には数百種類とも言われる細菌が存在しますが、その中身は7,8割が日和見菌、1,2割の善玉菌、残りが歯周病菌という構成だといわれています。この日和見菌というのは普段は悪さをしない菌ですが善玉菌が優勢になれば善玉菌へ、悪玉菌が優勢になれば悪玉菌に加勢する菌です。
歯周内科治療は位相差顕微鏡によりお口の中に感染している細菌、真菌(カンジダ)、原虫などを観察し動画システムに記録し、薬剤を選択し細菌や微生物叢(びせいぶつそう)を非常にきれいな状態に改善しながら、歯石の除去を行っていきます。
通常の歯周病治療(ブラッシング指導、歯石除去、外科処置)と比較すると、歯肉からの出血や腫れ、排膿等が、短期間で改善した状態を実感できる方が多いです。
自由診療になりますので治療期間の時間的制約はありません。歯周内科治療を開始しましたら集中して通院していただき、まず1クールを早めに終了させます。
また、並行してDNA検査(PCR検査)を行えば、歯周ポケット内の深い部分に生息している菌種等も特定が可能ですので、抗生剤の選定に利用が可能です。PCR検査については3菌種で11,000円です。その他の菌種については必要に応じて追加できます。ただし薬の正しい服用ができなかったり、その方の生活習慣の改善が全くない場合は100%までの効果が得られないことがあります。
こんな方にお勧めします
- 歯周病治療をやってみたが長続きせず進行している
- 短期間で集中的に治療したい
- 朝起きた時口の中がネバネバしている
- 外科的なことは避けたい
症例1
Before
after
治療時年齢・性別 | 65歳 男性 |
治療内容 | 歯周内科治療+セフゾン(抗生物質) 術後写真は6ヶ月後 |
経過 | 初診時には隣接面歯肉が発赤、腫脹しており、ポケットも大臼歯で深い所は7mmあった。基本の歯周内科治療の他に抗生剤としてセフゾン使用。PCR検査でもP.g菌、T.d菌、T.f菌の合計(Red complexという歯周病の三大原因菌)が大幅に減少することができた。本人自身のプラークコントロールも改善されたので、歯肉の腫れ、出血、口の中のネバネバ、口臭の訴えも改善できて、現在も維持されています。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 75,000円(PCR検査は別途) |
症例2
Before
after
治療時年齢・性別 | 51歳 男性 |
治療内容 | 歯周内科治療 術後写真は2ヶ月後 |
経過 | グラグラしている歯が治まったら、しっかり義歯を作りたいという主訴で来院。前歯、大臼歯共に動揺している歯牙が多く、初診時には歯肉も発赤しており、排膿もみられた。基本の歯周内科治療と適切なサイズの歯間ブラシの使用により、発赤も治まり、歯肉も引き締まってきた。歯周内科1クール後は保険でのメンテナンスを現在も継続中。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 67,000円(PCR検査は別途) |
症例3
Before
after
治療時年齢・性別 | 46歳 女性 |
治療内容 | 歯周内科治療 術後写真は5ヶ月後 |
経過 | 歯列不正が多く、特に臼歯部にポケットの深い部分が多く存在していた。一連の歯周内科治療終了後は特に歯間部の歯肉が引き締まり、腫れている時には見えなかった根面の歯石も見えてきて、除石も容易になってきた。現在も保険でのSPT継続中。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 67,000円(PCR検査は別途) |
症例4
Before
after
治療時年齢・性別 | 49歳 女性 |
治療内容 | 歯周内科治療 術後写真は4ヶ月後 |
経過 | 他院で以前、歯周内科をしていたが中断となる。初診時には既に口腔内数ヶ所に暫間固定がされていた。位相差顕微鏡でもトレポネーマ(動きが早く重症の歯周病の口腔内に多く存在する)も多くPCR検査でのRed complexは67000Copiesと多く、治療後は2850Copiesと大幅に減少。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 76,000円(PCR検査は別途) |
症例5
Before
after
治療時年齢・性別 | 56歳 男性 |
治療内容 | 歯周内科治療 術後写真は5ヶ月後 |
経過 | 朝起きた時の口のネバネバの改善を主訴として歯周内科治療を始めから希望して来院。1回目のPCR検査ではRed complex合計値が408800Copiesであったが、1クール終了したSRP後の最終検査では3種類共限界値以下の数値となり、主訴も改善がみられたので、保険のメンテナンスへ移行継続中。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 130,000円(PCR検査2回分を含む) |
症例6
Before
after
治療時年齢・性別 | 51歳 女性 |
治療内容 | 歯周内科治療 術後写真は6ヶ月後 |
経過 | 他院でブリッジ等の補綴処理は終了していたが、歯周病により動揺が大きくグラグラしている状態で来院され、歯周病治療を希望。当初歯根周囲から膿が出ていたが、歯周内科治療終了後には排膿も止まり、動揺も治まってきた。その後はメンテナンスにていい状態を維持されています。 |
リスク | ①使用する抗生物質に対してのアレルギーの可能性 ②腫れた歯肉が引き締まってくるまでは歯間ブラシ等の使用により出血がある場合がある ③歯肉が引き締まったことにより歯根が見えてくる可能性があり、プラークコントロールができなければ虫歯になる可能性がある |
費用 | 70,000円(PCR検査は別途) |
歯周病原因菌DNA検査(PCR検査)
これはお口の中にいる数百ともいわれる細菌のうち最も重度の歯周病に関係していると言われる原因菌
- 1. P.gingivallis(P.g.菌)
- 2. T.denticola(T.d.菌)
- 3. T.forsythensis(T.f.菌)
加えて
- 4. Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a菌)
- 5. Prevotella intermediate(P.i菌)
- 6. Fusobacterium nucleatum(F.n菌)
の計6種の細菌の有無を検査できます。
また、歯周ポケット内の特定部位で「6種類の菌の菌数」を調べる科学的な検査です。
- 1・2・3は3大歯周病菌→RedComplex(血液を栄養とします)
- 4は進行が速い菌
- 5は女性ホルモンを餌にする菌
- 6は強い臭いを出す菌
ただし、位相差顕微鏡で視覚的に確認できる、らせん状菌は約60種存在すると言われているので、やはり正確にはPCR検査での確認をお勧めしています。
今や歯周病菌は血液を介して全身を回るとされており、最近の研究により前述の病気の他にも脳血管疾患、骨粗鬆症、肥満等とも関係していると言われてきています。